電気通信事業法第52条第2項において、端末機器を電気通信事業者のネットワークに接続するための技術基準として、次の3つの原則を定めています。
(1) 電気通信回線設備を損傷し、またはその機能に障害を与えないようにすること。 (2) 電気通信回線を利用する他の利用者に迷惑を及ぼさないようにすること。 (3) 電気通信事業者の設置する電気通信回線設備と利用者の接続する端末設備との責任の分界が明確であるようにすること。 |
端末機器の技術基準は、この電気通信事業法第52条第2項で定める三原則に基づき「端末設備等規則(総務省令)」で定められていますが、端末機器の品質や性能等に関する事項は含まれていません。
2 技術基準の内容技術基準は、責任の分界や安全性等に関する全般基準のほか、電話用設備端末(アナログ電話端末、移動電話端末)、無線呼出端末、総合デジタル通信端末、専用通信回線設備等端末に関する各基準から構成されています。この状況を図7に示します。
図7 技術基準(端末設備等規則)の状況責任の分界に関する基準 | ⇒ | ◆責任の分界 |
責任の分界に関する基準 | ⇒ | ◆漏洩する通信の識別禁止 ◆鳴音の発生防止 ◆絶縁抵抗等 ◆過大音響衝撃の防止 ◆配線設備等 ◆電波を使用する端末 |
電話用設備端末(アナログ電話端末)の基準 | ||
電話用設備端末(移動電話端末)の基準 | ||
インターネットプロトコル電話端末の基準 | ||
インターネットプロトコル移動電話端末の基準 | ||
無線呼出端末の基準 | ||
総合デジタル通信端末の基準 | ||
専用通信回線設備及びデジタルデータ伝送端末の基準 | ||
インターネットプロトコルを使用する専用通信回線設備等端末(セキュリティ)の基準 |
技術基準のうち責任の分界や安全性等に関する基準については次のような項目があります。
(1)事業用電気通信設備との責任分界点を持ち、1回線ごとにその事業用電気通信設備から容易に切り離せること。 (2)事業用電気通信設備において漏洩する通信内容を意識的に識別しないこと。 (3)定められた条件に従い鳴音の発生を防止する機能を有すること(2線式のアナログ端末が対象)。 (4)電源回路と筐体及び事業用電気通信回線設備との間に所定の絶縁抵抗及び絶縁耐力を有すること。金属製の台及び筐体は所定の接地要件を満たすこと。 (5)通話中に受話器から誘導雷等による過大な音響雑音が入ることを防止すること。 (6)配線設備は、評価雑音電力、絶縁抵抗、強電流電源との関係、接地の方法につき所定の要件を満たすこと。 (7)端末設備内で電波を使用するとき、混信防止のための識別符号を有すること、使用電波の空き状態確認ができること、無線部分は原則とし1筐体内にあり、容易に開けられないこと。 |
また、端末機器種別ごとに異なる技術基準の内容の一例として「端末機器の備えるべき基本的機能」があります。電話用設備端末(アナログ電話端末)の基準では「端末の直流回路は発信または応答を行うときに閉じ、通信が終了したとき開く」ことが規定されており、総合デジタル通信端末の基準では、「発信、応答、通信終了時に定められたメッセージを送出する」こととなっています。
3 技術的条件の内容 技術基準以外に通信事業者が総務大臣の認可を得て制定する技術的条件があります。これは、新しいネットワークサービスに関連して発生する特殊な専用回線の端末、特殊な移動通信回線端末の条件、その他の技術的条件適用端末の条件等です。
技術的条件適用端末機器も電気通信事業法で定める技術基準の三原則に基づき、責任の分界や、安全性等に関する基準が適用され、さらに、各端末機器の種別に対応する技術的条件を満たすことが求められます。
このように技術的条件は、先行的で過渡的な技術を用いた端末機器や、特定の利用者しか想定されない等の端末機器に係るもので、これが技術的に安定し一般化すれば技術基準に移行していきます。最近の例では、技術的条件で認可を受けていた1000BASE-T、DOCSIS3.0が平成23年4月に技術基準に移行しています。