〇 技術基準適合証明等制度に関する法令等
日本国内で使用する無線設備に関しては「電波法」により、無線局の開設及び運用が定められています。法第3章の無線設備の技術基準に関して詳細は「無線設備規則」で規定されています。技術基準適合証明等の対象となる特定無線設備の種類や具体的手続等については「特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則」で規定されています。技術基準及び適合証明等に関して、さらに詳細を決める告示がありますのでご注意ください。
・電波法の第110条に罰則規定があり、免許を受けず、適合表示のない特定無線設備の機器を使用すると使用者が処罰を受けます。
〇 特定無線設備
日本国内で使用する無線設備は無線局として総務大臣の免許を受ける必要がありますが、小規模な無線局に使用するための無線設備については「特定無線設備として技術基準適合証明」等を取得して適合表示を行うことにより、適合表示無線設備として以下のような利便を得ることができます。
- 免許が不要な無線設備 (法第4条第2項及び第3項):無線LAN等
・[免許不要局]:開設のための免許が不要となっています。
- 特定無線(移動)局の無線設備 (法第27条の2第1号):携帯電話機等
・[特定無線(移動)局]:「移動する無線局であつて、通信の相手方である無線局からの電波を受けることによつて自動的に選択される周波数の電波のみを発射するもののうち、総務省令で定める無線局」と規定されています。
- 上記以外の総務省令で定める特定無線設備:携帯基地局、デジタル簡易無線等
・登録局や簡易な免許手続きの無線局:登録局は無線局免許によらず、総務省への登録により開設できる無線局です。簡易な免許手続きの無線局は開設検査省略など簡易な手続きにより免許を取得することができます。
無線LANなど上記1.の無線設備で「適合表示」されたものは誰でも自由に使用することができます。2.は携帯電話機等の無線設備が該当し、「適合表示」されたものは通信事業者が利用者の携帯電話機を
包括免許の範囲として一括して登録することにより、一般利用者が改めて免許を受ることなく利用することができる無線設備です。
3.の登録局はデジタル簡易無線局(351MHz帯)などの総務省への登録により開設できる無線局です。簡易な手続きの無線局としては開設に当たって必要とされる検査を省略できる無線設備でアマチュア無線局設備や船舶レーダ、携帯基地局などが該当します。電気通信端末機器としては3.に該当するものがありませんが、
JATEでは3.の簡易な免許手続きの無線局設備についても認証業務を行っています。
特定無線局の種類は多岐にわたるため、総務省のホームページを参照してください。
総務省の特定無線設備、特別特定無線設備一覧へ
〇 技術基準適合証明と工事設計認証
技術基準適合証明は、JATEなどの登録証明機関等が、特定無線設備について、電波法に定める技術基準に適合しているか否かについての判定を無線設備 1台ごとに証明する制度です。登録証明機関は、総務省令で定めるところにより、無線設備 1台ごとに試験等及び審査を行った上で証明を行います。多数台の同一機種について証明を受ける場合は抜取り試験が可能です。登録証明機関は特定無線設備について技術基準適合証明した場合、その無線設備に適合表示を付します。この技術基準適合証明は、誰でも申し込むことができます。
一方、工事設計認証は、特定無線設備が技術基準に適合しているかどうかの判定について、その設計(工事設計)及び製造等の取扱いの段階における品質管理方法(工事設計どおり製造されることの確認の方法)を対象として、登録証明機関が行う認証制度です。無線設備そのものではなく、工事設計を対象としており、実際の無線設備は認証後に製造される点が、技術基準適合証明と異なります。工事設計認証の場合、適合表示は工事設計認証を受けた者(認証取扱業者)が製造後に付すことになります。工事設計認証の申込は、特定無線設備を取り扱うことを業とする者(製造、販売、輸入、工事、修理、点検、加工等の取扱いを行う業者)が行えます。一般の方が自分で使用するための無線設備について工事設計認証を申し込むことはできません。
〇 特性試験
技術基準適合証明または工事設計認証を受けるに当たって、特性試験申込設備について登録証明機関が試験を行い、技術基準に適合するものであるかどうかについて審査を行うこととされています。また、申込者が特性試験の各号に適合することを示す書類及び試験の結果を記入した書類が提出した場合、登録証明機関は工事設計書との対比照合を行うこととされており、申込者が試験を実施し、試験結果を添付して申し込むこともできます。登録証明機関及び製造業者等が遵守すべきこの特性試験については、「特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則」において、「総務大臣が別に告示する試験方法又はこれと同等以上の方法により」試験を行うこととされています。総務大臣が告示する試験方法は「特性試験の試験方法を定める件」として、特定無線設備の種別ごとに、占有周波数帯域幅や空中線電力等の測定項目に関する測定系統図、測定器の条件、測定操作手順、試験結果の記載方法等について規定しています。なお、試験場所の環境はJIS Z 8703号による常温常湿(温度:5-35度、相対湿度:45-85%)または取扱説明書記載の動作環境とされています。
スプリアス発射又は不要発射の強度は別表第1として規定されていますが、告示改定時の付則として、当分の間、測定すべき上限及び下限の周波数が緩和されています。
特定無線局は種類は多岐にわたるため、それぞれの試験方法については総務省のホームページを参照してください。
総務省の特定無線設備の特性試験の試験方法へ
なお、技術基準が定められた後、試験方法が告示されるまで期間が空くことがあります。その場合、JATEが総務省へ届け出た「臨時に定める試験方法」をもって試験することになりますのでお問合せください。
〇 技術基準適合証明及び工事設計認証の審査
技術基準適合証明の審査は、以下によって行います。
- 工事設計の審査:申込設備の工事設計書に記載された内容が技術基準に適合するものであるかどうかについて審査を行う。
- 対比照合審査:申込設備とその工事設計書に記載された内容とを対比照合する。
- 特性試験:申込設備について、試験を行い、かつ、技術基準に適合するものであるかどうかについて審査を行う。
特定無線設備の各種別によって試験項目及び使用測定器が「特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則」の別表第1号に規定されており、上記「総務省の特定無線設備の特性試験の試験方法へ」の試験方法またはこれ以上の方法で行うこととされています。
使用する測定器は「法第24条の2第4項第2号イからニまでのいずれかに掲げる較正等を受けたもの(その較正等を受けた日の属する月の翌月の1日から起算して1年以内[総務省令で定める測定器は3年以内]のものに限る。)を使用しなければならない。」とされています。
〇法第24条の2第4項第2号イからニまで
- 国立研究開発法人情報通信研究機構又は第102条の18第1項の指定較正機関が行う較正
- 計量法第135条又は第144条の規定に基づく校正
- 外国において行う較正であつて、機構又は第102条の18第1項の指定較正機関が行う較正に相当するもの
- 別表第三の下欄に掲げる測定器その他の設備であつて、イからハまでのいずれかに掲げる較正等を受けたものを用いて行う較正等
多数台の同一機器について技術基準適合証明を受ける場合、特性試験は抜き取り試験が可能です。
工事設計認証では技術基準適合証明の審査に加え、確認の方法の審査が必要となります。確認の方法の審査は「工事設計認証に係る確認方法書(特定無線設備がその工事設計に合致することの確認の方法に係る証明規則別表第4号に掲げる事項その他必要な事項を記載した書類又はこれに類するものであつて、特定無線設備の取扱いに係る工場等の全部が証明規則別表第4号に掲げる事項のすべてに適合していることを証するものとして登録証明機関が認める書類 [ISO9001登録書写し等]をいう。)及び工事設計認証の求めに係る工事設計(当該求めに係る確認の方法を含む。)に基づく一の特定無線設備により、工事設計認証の求めに係る工事設計に基づく特定無線設備のいずれもが当該工事設計に合致するものとなることを確保することができるかどうかについて適切に審査を行う。ただし、申込設備が提出されなかつた場合は、工事設計認証に係る確認方法書並びに試験結果を記載した書類及び写真等により審査を行うことができる。」とされています(証明規則別表第3号第3)。
なお、無線LANなどの免許不要局単体で「試験結果」を添付して工事設計認証の申し込みをいただいた場合、総務省へ報告する認証情報として申込者情報等に加えて「試験結果」についても報告します。
〇 認証取扱業者の工事設計合致義務
工事設計認証を受けた者(認証取扱業者)は、その工事設計認証に係る工事設計(認証工事設計)に基づく特定無線設備を取り扱う場合において、認証工事設計に合致するようにしなければなりません。認証取扱業者は、工事設計認証に係る確認の方法に従い、その取扱いに係る特定無線設備について検査を行い、以下の項目を記載した検査記録を作成し、これを検査の日から十年間保存しなければなりません。
- 検査に係る工事設計認証番号
- 検査を行つた年月日及び場所
- 検査を行つた責任者の氏名
- 検査を行つた特定無線設備の数量
- 検査の方法
- 検査の結果
また、検査を最後に行つた日から起算して十年を経過するまでに下記の変更があった場合は総務省へ届け出る必要があります。
- 技術基準適合証明を受けた者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
- 技術基準適合証明を受けた特定無線設備の種別
- その他総務省令で定める事項
総務省令で定める事項は次のとおりです。
- 変更した事項
- 変更した年月日
- 変更の理由
〇 適合表示
技術基準適合証明を受けた特定無線設備には登録証明機関が適合表示を行います。また、工事設計認証を受けた特定無線設備には、認証取扱業者が設計合致義務を履行した場合、適合表示を付することができます。適合表示の表示方法は、
- 無線設備の見やすい箇所に付す方法
- 体内に植え込まれた状態等で使用される特定無線設備、その他の当該表示を付すことが困難又は不合理である特定無線設備については、当該特定無線設備(取扱説明書及び包装又は容器を含む。)の見やすい箇所
- 特定無線設備に電磁的方法により記録し、当該表示を特定の操作によつて当該特定無線設備の映像面に直ちに明瞭な状態で表示することができるようにする方法
- 特定無線設備に電磁的方法により記録し、当該表示を特定の操作によつて接続した製品の映像面に直ちに明瞭な状態で表示することができるようにする方法
なお、適合表示無線設備を組込んだ製品の取扱い業者は、製品に組込まれた適合表示無線設備に付されている表示と同一の表示を上記の方法により当該製品に付することができます(「紛らわしい表示」に該当しなくなりました)。
適合表示の様式は
特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則の様式第7号により、適合マークに記号
(補助マーク)及び技術基準適合証明番号又は工事設計認証番号を付加したものとされています。
- 大きさは、表示を容易に識別することができるものであること。
- 材料は、容易に損傷しないものであること(電磁的方法によつて表示を付す場合を除く。)。
- 色彩は、適宜とする。ただし、表示を容易に識別することができるものであること。
- 技術基準適合証明番号の最初の3文字は総務大臣が別に定める登録証明機関又は承認証明機関の区別とし、4文字目又は4文字目及び5文字目は特定無線設備の種別に従い定められた記号、その他の文字等は総務大臣が別に定めるとおりとすること。
「特定無線設備の種別に従い定められた記号」は総務省ホームページを参照してください。
- 工事設計認証番号の最初の3文字は総務大臣が別に定める登録証明機関又は承認証明機関の区別とし、4文字目は「-」とし、5文字目から10文字目までは登録証明機関又は承認証明機関が一の認証工事設計ごとにアラビア数字若しくは英字又はこれらの組合せにより定めるものとする。ただし、次に掲げる場合は、それぞれ次のとおりとする。
- 異なる認証工事設計に基づく二以上の特定無線設備により一の無線設備を構成するものである場合は、当該一の無線設備に対して一の工事設計認証番号とすることができる。
- 認証工事設計について新たな工事設計認証をした場合は、当該認証工事設計に基づく適合表示無線設備の変更の工事を伴わないときに限り、当該認証工事設計に係る工事設計認証番号を新たな工事設計認証番号とすることができる。この場合において、当該工事設計認証番号に係る表示が付された特定無線設備については、新たな表示が付されたものとみなす。
なお、電気通信端末の適合認定等を受けた特定無線設備では、適合マークを1つとして、それぞれの補助マーク及び認証番号を表示することができます。
電気通信端末の適合認定等を受けた特定無線設備の適合表示の例:
| 021-A17034
ADEF170034001 |
適合 マーク | ・電波法: 補助マーク + 工事設計認証番号 (登録証明機関番号: 3桁 + "-" + 証明機関の定める番号・記号: 6桁)
・電気通信事業法: 補助マーク + 設計認証番号 (端末の種別 + 西暦の下2桁 + 認証番号: 4桁 + 登録認定機関番号: 3桁) |
· JATEの電波法での登録証明機関を区別する文字は021です。
· JATEの電気通信事業法での登録認定機関を区別する文字は001です。
電気通信事業法による認証についてはこちらをご覧ください。
〇 簡易な審査
工事設計認証を受けた特定無線設備について工事設計の一部を変更する場合、軽微な変更であれば一部審査を省略した簡易な審査として新たな工事設計認証することがあります。また、確認方法書の記載事項について変更があった場合やISO9001登録書の適用範囲の変更、品質管理体制の変更などの場合について簡易な審査を行い、新たな工事設計認証を行います。なお、簡易な審査による工事設計認証では従来の工事設計認証番号を使用することができるとされています。
工事設計書の参考事項について変更があった場合については登録証明機関に届出を求められることがあります。したがって、工事設計認証を受けた特定無線設備とその工事設計の一部を変更したものとをそれぞれ製造する場合、新たな工事設計認証番号を従前の番号と同じとすることが法律的には可能です。登録証明機関で審査を行い、同一番号でも問題ないと判断されれば、同じ工事設計認証番号を使用できます。
〇 技術基準適合証明等に関するリンク
技術基準適合証明等に関する情報としては総務省の「電波利用ホームページ」が充実しております。
JATE以外の登録証明機関については、上記の総務省の無線局機器に関する基準認証制度のページをご参照ください。
JATEでは技術基準適合証明及び工事設計認証業務を開始しました。認証対象は、電波法第38条の2の2に規定される特定無線設備(無線LAN、ワイヤレス・イヤホンマイクや携帯電話などの電気通信端末機器、その他無線局の無線設備:特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則第2条参照のこと)です。電波を使用する電気通信端末機器について、従前からの電気通信事業法に基づく技術基準設計認証と合わせて、ワンストップで端末設計認証と工事設計認証を同時に取得していただくことが可能となります。